野村ESGマンスリー(2022年5月)

大原則は「サステナブル投資」。とはいえ…:金融引き締めの逆風などが企業のESGへの取り組みに影響するかを注視

  • FRBの想定以上の引き締めへの懸念でESG投資へも逆風
  • 防衛産業の再評価は「サステナブル投資」か?
  • 今年の欧米株主総会では環境関連の注目度は昨年ほど高くない模様

FRBの想定以上の引き締めへの懸念でESG投資へも逆風

コロナ禍からの経済活動の回復、急速な脱炭素の取り組み、そしてロシア・ウクライナ紛争による原材料の供給不安など、複合的な要因でインフレ圧力が高まっている。それを踏まえて米FRBが想定以上にタカ派的な金融引き締めを行うのではないか、という懸念もあり、グローバルに株式市場が不安定化している。ESG関連投資も、グロース銘柄的な意味合いで評価されていた再エネ関連などを中心に、苦戦している。

防衛産業の再評価は「サステナブル投資」か?

こうした中、ESG投資であっても円滑な脱炭素への移行を支えるという観点で化石燃料関連企業、民主主義を守るためという観点で防衛産業を再評価すべきではないかという意見も散見される。短期的な投資収益を意識すると、こうした考え方もありうるかもしれないが、多くの機関投資家が国連PRIに署名している中、SDGsと矛盾しうる考え方は広がらないであろう。加えて、化石燃料や防衛産業の再評価がエクイティストーリーに支えられる、つまり持続的な企業価値の向上につながるとも考えにくい。基本的にはFRBの金融引き締めが景気や企業業績、そして企業のESGへの取り組みに​​​影響を及ぼすかどうかに注意しながらも、中長期的な取り組みの継続ないし強化に注目していきたい。

今年の欧米株主総会では環境関連の注目度は昨年ほど高くない模様

昨年の欧米企業の株主総会では、石油関連企業に脱炭素への取り組みを促すための株主提案が注目された。今年については、株主からの賛同は拡がっていない模様である。日本でも、6月の総会に向けた株主提案が行われるとみられるが、制度上定款変更の要求はハードルが高い中、大手機関投資家の賛同を得て企業の環境関連の対応や開示を促進するものになるか、注目しておきたい。
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『野村ESGマンスリー(2022年5月)』 2022/5/12 より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト