野村ESGマンスリー(2022年10月)

気候変動への金融面の対応に綻び?:COP27を前に先進国の政府、金融機関の結束が保てるか

  • 発足後1年足らずでGfanzから脱退する動き
  • 脱炭素の流れの中で「トランジション」がより配慮されるようになるか
  • COP27での新興国の要請に応えられるか

発足後1年足らずでGfanzから脱退する動き

金融面から脱炭素を後押しするため、昨年のCOP26に合わせ設立されたGFANZ (Glasgow Financial Alliance for Net Zero)から、オーストリアとオーストラリアの年金基金が脱退したことが明らかになった。また、複数の大手米銀が脱退検討とも報じられている。一因は国連が支援する気候変動対策キャンペーン「Race to Zero」が、6月に基準を改定、企業、金融機関などが加盟維持するための要件を強化したことにある。この要件はGFANZとも連動しているため、要件に対応するための人員が不足したり、要件強化によって独占禁止法違反のような法的リスクが浮上したと指摘されている。​

脱炭素の流れの中で「トランジション」がより配慮されるようになるか

こうした状況を受けて「Race to Zero」は、9月16日に石炭産業への新規融資を明確に禁じる規定を緩めるなどの要件修正を行った。過度な脱炭素への傾斜に対する反動で、気候変動対策への金融面の後押しが弱まりかねず、それを食い止める努力が行われている形である。これがGFANZの綻びの修復に奏功するかは不透明ではある。一方で、今後結束を保とうとする議論の中で、足元のエネルギー安全保障と中長期的な脱炭素のバランスを取る形で「トランジション」も配慮されるようになれば、一足飛びの脱炭素要求から、(ウォッシング懸念は残るものの)より柔軟な脱炭素の取り組みを後押しすることになる可能性もある。GFANZの結束の行方と共に注目されよう。

COP27での新興国の要請に応えられるか

こうした中、11月6日からエジプトでCOP27が開催される。詳細な議題等はまだ明らかではないが、先進国である英国で開催された昨年とは異なり、新興国の要請が強まりやすいとみられる。先進国は新興国に対して年間1000億ドルの支援を約束しているが、その約束は守られておらず、新興国は気候変動の影響を大きく受ける状況が続いている。先進国でポピュリズム的な動向が強まり、自国の景気対策やエネルギー安全保障に忙殺される中、先進国として結束を保ち、脱炭素の方向を確認しながら新興国の要請も受け止めてCOP27を乗り越えることができるのか、今後の各国の動向には注意が必要である。

『野村ESGマンスリー(2022年10月)』 2022/10/6 より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト