野村インベストメント・フォーラム・アジア: 5Gサービスは今後も中国大手キャリアの成長を牽引

中国における5Gサービスの普及は、ARPU(加入者当たり平均売上高)や通信サービス収入の拡大を牽引する見込み。

  • 5Gサービスの普及は、中国大手キャリアの収益拡大を牽引する見込み
  • 業界の注力領域はシェア競争から、モバイル・ブロードバンドサービスにおける価値創造に移行しており、大手キャリアのファンダメンタルズ向上につながる可能性が高い
  • また設備投資に対する慎重姿勢もプラス材料に

5Gサービスの普及が加速する中国では、国内三大キャリアがネットワーク・インフラの構築を着実に進めている。新たなデジタル・トランスフォーメーション時代の収益力強化に向けた基礎固めの一環だ。

5Gネットワーク運用コストの上昇は、2020年を通じて三大キャリアの利益率を圧迫した。しかし、3社合計で5Gサービス加入者数は今年4月時点で4億人に達し、普及率も2月時点の22.6%から30%超まで上昇している。

契約数の飽和などを背景に、三大キャリアのモバイル通信事業は2019年終盤に5Gが商用開始されるまで伸び悩んでいた。5Gサービスの利用者増は、ARPU(加入者当たり平均売上高)とモバイル通信サービスの収益拡大を後押しすることになろう。

また中国ではデータ・サービス需要も堅調に拡大している。同国の工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology)によると、モバイルサービス利用者の月間平均データ使用量は今年2月時点で10.85GBと、前年比22%の伸びを見せている。

同国の通信会社は、高付加価値のブロードバンド・サービス(インターネットテレビやIoTなど)へ軸足を移す戦略を進めており、今後も成長基調が続くだろう。5Gサービスがさらに普及すれば、ワイヤレス・固定ブロードバンドを統合したソリューションも提供可能になるだろう。

三大キャリアが設備投資面で慎重姿勢を保っていることもプラス材料といえる。通信会社による昨年の設備投資は前年比14%と大きく増加したが、今年から来年にかけては1桁台前半に落ち着くと見ている。その背景となっているのは、遠隔地域における低周波数帯(700MHz・2.1GHz)の活用と、通信インフラの共同構築・共同利用を業界横断で推進していることだ。

5G・ワイヤレス関連の投資が今後急速に拡大する見込みは低いかもしれない。しかし産業用インターネットや企業向けソリューションといった分野を長期的に伸ばしていくため、インターネット・データセンターやクラウドといったデジタルインフラへの投資は強化される可能性は高いだろう。

著者

    Bing Duan

    Bing Duan

    China Technology and Telecom Research