グローバル経済見通しとマーケット情報を毎週更新
米国
FRBは24年 (7月と12月)に計0.50%ポイント、25年に四半期に1回の利下げを実施すると予想している。
FRBは5月にバランスシート削減のペース縮小を発表し、6月から開始、12月に量的引き締め(QT) を停止する公算が大きい。
ディスインフレは再開するとみるものの、賃金の伸び鈍化が滞り、財価格ディスインフレの縮小、借家賃料/帰属家賃の安定化により、物価目標達成の「最後の1マイル」問題が残ろう。
雇用の伸びは引き続き緩やかになろうが、労働市場のストレスや広範なレイオフの兆候はほとんど見られない。
景気後退リスクは長く尾を引くとみられるが、主には目先のリスクとなろう。ただし、基本シナリオでは景気後退はないとみる。
ユーロ圏
経済は最悪期を過ぎたと考えられ、足元の経済統計の改善や金融政策引き締めの影響が予想より小さいことを踏まえ24年の実質GDP成長率予想を小幅上方修正した。
ユーロ圏年のインフレ率は24年いっぱいは政策目標を上回ったままとなり、コアインフレ率が+2%に向けて減速するのは25年後半からとなろう。
9月のECB政策理事会で中銀預金金利が4.0%に引き上げられて利上げは終了したと判断される。利下げ開始は24年6月からとなろう。
資産購入プログラム(APP)購入資産は7月から全額が再投資停止となった。パンデミック緊急資産購入プログラム(PEPP)資産の再投資停止による縮小は24年7月から開始されよう。
英国
企業と家計が支出を抑制する中、実質GDPは23年7-9月期から2四半期のマイナス成長で計0.3%ポイント減少しよう。
超過貯蓄と政策のタイムラグ長期化が見通しに対する上振れリスクとなる一方、金融引き締めの規模と失業率の上昇が下振れリスクとなろう。
エネルギー価格下落および前年の高水準を反映し、インフレ率低下が見込まれるが、政策目標に戻るのは24年末以降となろう。
イングランド銀行(中央銀行)は23年9月の会合で政策金利を5.25%に据え置き、利上げを終了したとみる。利下げは24年7-9月期以降となろう。
日本
日本経済は2024年1-3月期に下振れる可能性が高いが、その後は潜在成長率を上回る回復基調を辿ろう。
24年春闘での賃上げ率は23年を大きく上回る可能性が高く、その後のインフレは粘着性を高めることになろう。
マイナス付利・YCCが3月に撤廃された。今後はフォワードガイダンスなき金融政策運営に向かう。
インフレの粘着性が増す中、日銀は24年10月に追加利上げに打って出るだろう。
アジア(日本を除く)
半導体を中心とした輸出の回復と内需の安定により、24年初めのアジアの景気は最適局面に入ろう。
テクノロジー・サイクルが好転すれば韓国・台湾の見通し改善に資する可能性がある一方、中期的にはインドと東南アジア諸国連合(ASEAN)が最も有望とみられる。
消費者物価(CPI)上昇率はすべての国・地域で減速が見込まれるが、シンガポールでは下げ渋り、タイではデフレとなるなど、濃淡がある。
24年1-3月期までは政策金利の据え置きが続き、その後、タイを皮切りに4月から利下げに転じよう。
韓国:半導体サイクルの好転を受けて、利下げ開始は24年7月に後ずれすると予想(24年は計1.00%ポイント利下げを予想)。
インド:底堅い成長と食料品インフレの上昇を背景に金融政策の据え置きが長期化し、24年8月から計1.00%ポイントの利下げが実施されよう。
インドネシア:次期政権のポピュリズム的政策は財政リスクを高めており、経常収支赤字も拡大傾向にある。
豪州:経済は景気後退入りをギリギリで回避しよう。インフレが減速し、失業率が上昇する中、24年8月から利下げが開始されよう。
「5%前後」という野心的な成長目標の達成には、さらに多くの刺激策が必要。
繰延需要の一巡、不動産セクターの悪化、地方政府の債務抑制、グリーン投資の鈍化が景気の下押し要因となろう。
本格的な成長回復の最大のハードルは、下級都市における分譲済みの未完成住宅が大量に残っていることである。
政府の対応は真の解決に近づいているが、まだそこには至っていない。
政府は最終的に、不動産部門を救うため、未完成の住宅建設を完了させる最後の貸し手としての行動を迫られよう。
米国 エコノミスト
欧州 チーフエコノミスト
中国 チーフエコノミスト
Chief Economist, Japan
グローバル マクロ リサーチ ヘッド
インド・AEJチーフエコノミスト