野村ESGマンスリー(2023年7月)

ESGはNGワードになるのか

  • 「ESG」の用語は、誤解され攻撃材料になるため使用しないとの宣言
  • 主要企業の株主総会決議では低収益率企業への視線が厳しく
  • JPXプライム150に含まれる銘柄はESG評価も高い傾向

「ESG」の用語は、誤解され攻撃材料になるため使用しないとの宣言

米国での「ESG」をめぐる考え方の板挟みになっている大手運用会社のCEOは、保守強硬派と左派の双方がESGという用語を「誤解」して「攻撃材料とする」ため、ESGという用語を今後使うつもりはない、と発言した。保守強硬派からは、ESG投資が社会正義を振りかざす、運用会社の役割を超えた行為であると批判され、一方左派からはESGを標榜しながら気候変動などに対して不十分な対応しかとっていないと批判されている。気候変動などへの対策と経済・企業活動を持続的な形でどう両立させていくかが問われており、その中で様々な摩擦が生まれていることの反映と整理できる。EUでも各国の利害の衝突で電力市場改革が合意できなかったり、自然再生法が否決されている。こうした利害対立を超克できるのか、政治的な指導力が一段と問われている。

主要企業の株主総会決議では低収益率企業への視線が厳しく

一方、日本では3月期決算企業の株主総会が開催された。株主提案が増加したり、アクティビスト投資家の動きが目立ったりする中で、総会の議決権行使の結果が注目された。主要企業では株主提案はすべて否決されたが、脱炭素に関する取り組み、役員報酬の個別開示などで比較的高い賛成比率となった。また、3期連続でROE8%未達だった企業の取締役選解任議案への賛成比率は、3期以内に1度でも8%を達成した企業の取締役選解任議案への賛成比率を下回り、較差が拡大した。低収益に対する株主の視線が厳しくなっていることを示している。

JPXプライム150に含まれる銘柄はESG評価も高い傾向

東証は企業価値向上への取り組み強化を要請する一方、資本収益性と市場評価という、企業価値創造につながる二つの観点から選定した「JPXプライム150指数」を開発・発表した。東証発表資料によれば、同指数の構成銘柄のPBR、ROE、5年売上高成長率の中央値は欧米主要指数と遜色ない。加えて、この指数に含まれる銘柄はESG評価も高い傾向が見受けられる。

野村ESGマンスリー(2023年7月) 2023/7/13 より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト

    有井 菜月

    有井 菜月

    野村證券 アナリスト