野村ESGマンスリー(2023年9月)

環境政策を巡る国際的なせめぎあいの季節

  • 「2℃シナリオ」と整合的なCO2削減ができないとの石油会社の見通し
  • アフリカの要求が「補償」から「機会提供」にシフト?
  • COP28に向けて脱炭素の再強化に向けた要請も示される

「2℃シナリオ」と整合的なCO2削減ができないとの石油会社の見通し

引き続き、世界各地で高温や渇水、一方で洪水といった異常気象の影響が報じられ、地球温暖化への懸念が強まっている。そうした中、エクソンモービルが、2050年のエネルギー関連の二酸化炭素排出量予想について、IPCCの「2℃シナリオ」に整合的な110億トンを大きく上回る、250億トンになるという見通しを発表した。先進国ではエネルギー効率改善で排出量が減少する半面、世界人口の増加と生活水準向上によるエネルギー需要の増加が主因とされている。その当否はともかく、各国政府や産業界による排出削減加速の必要性を後押しするものといえる。11月のCOP28に向けた各国の動きが注目される。

アフリカの要求が「補償」から「機会提供」にシフト?

G20首脳宣言は再エネ導入加速についてはG7合意を踏まえた形となったが、G7での「化石燃料」使用の段階的廃止は「石炭」になり、やや後退した印象もある。一方9月4~6日に開催された初のアフリカ気候サミットでは興味深い動きが見られた。グテレス国連事務総長やフォンデアライエンEU委員長も出席したこの会議で、開催国ケニアのルト大統領は、アフリカ諸国が気候変動の悪影響と戦うことを支援するために広範な債務軽減と再エネ拡大に向けた投資資金の大幅な拡大、加えて財源としてのグローバルな炭素税導入を求めた。実際に、ドイツとケニアがグリーンプロジェクトの資金確保に向けて債務交換を行ったとの具体的な動きも報じられた。

この会議での合意は、アフリカとしてCOP28に臨む基本姿勢であるとも考えられる。アフリカ諸国の要求が、昨年のCOP27で合意された「Loss & Damage」への対応といった「補償」中心から一歩進んで、経済成長につながるような「機会の提供」に変化しているのか、今後の関係国の動きに注目したい。ただし、再エネ拡大が強調されて排出量削減がないがしろにされると、温暖化リスクが高まることになる点は無視できない。

COP28に向けて脱炭素の再強化に向けた要請も示される

これ以外にも、COP28を意識したとみられる様々な報告や発言などが伝えられている。グローバルに企業の環境対応を評価するCDPは、金融機関は投融資にあたり、気候変動に加え、森林・水といった自然へのインパクトを考慮しなければGHGネットゼロは困難になるとのレポートを発表した。また、IMFは化石燃料への政府補助金削減の公約は実現していないと報告書で指摘した。さらにケリー米大統領特使は、世界の石油・ガス業界に対して、温室効果ガス排出量削減のための具体策をCOP28に提出するよう要請した。このように様々な方面から、脱炭素の再強化に向けた要請が示されており、議論の展開に注目したい。

野村ESGマンスリー(2023年9月) 2023/9/14 より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト