野村ESGマンスリー(2023年12月)

COP28は「機会」を求める見本市にも

  • 産油国が「化石燃料からの移行」に言及したことには一定の評価
  • 過去最高の10万人が参加したCOP28
  • 日本企業の人権対応もレベルが上がってきた?

産油国が「化石燃料からの移行」に言及したことには一定の評価

地球温暖化対策を議論するCOP28は、例年通り会期を延長して成果合意文書をまとめた。成果合意文書には、多くの国が求めていた化石燃料の「段階的廃止」は盛り込まれなかったが、2050年ネットゼロ達成のためこの十年間でエネルギーシステムにおける化石燃料からの移行に向かうことが明記された。これでは実効性が担保されないという批判は強い。また、途上国や島嶼国への資金援助増額を求める声は大きい。しかし多くの国・地域で選挙が予定され痛みを伴う環境政策加速が期待しづらい2024年を前に、産油国である議長国UAEの下で、COP史上初めて「化石燃料からの移行」が言及されたことには一定の評価ができよう。

過去最高の10万人が参加したCOP28

各国の交渉団、企業関係者や環境活動家がドバイに集い、COP28が開催された。12月7日付のブルームバーグ記事によれば、参加者は10万人におよび、グラスゴーで開催された2021年の3倍近く、パリ協定が結ばれた2015年の約4倍である。気候変動への関心の高まりを示すものである一方、それぞれが脱炭素の取り組みを披露する場になっている模様である。本レポートでは、これまで脱炭素が「削減」より「機会」を求める色彩を強めていることを指摘してきた。実際、COP28は国や企業にとって自国・自社の脱炭素に寄与する技術や製品を示して新たな事業機会を探す見本市的な場にもなったようである。

日本企業の人権対応もレベルが上がってきた?

WBAが、人権に関する問題が起こりやすいと考えられる5業種のグローバル企業の人権対応をスコア化して発表しているが、今年は採掘物産業と衣料品製造・販売について新たなスコアが発表された。売上高などを考慮して対象企業を選んでいるため日本企業は少数である。そうした中、採掘物産業では3社のうち1社が業種平均並みで残り2社は低スコアと、人権対応の遅れがうかがわれる。

しかし、衣料品製造・販売ではグローバルで4位となった企業がある。同社は人権侵害が懸念されるウイグル産の木綿を使用しているなどと批判されたこともあったが、サプライチェーン上の人権リスクなどを特定して対応方針などを策定、実行していることが評価されているとみられる。日本企業であっても人権対応のレベルを上げることができる実例といえよう。

野村ESGマンスリー(2023年12月) 2023/12/15より

著者

    若生 寿一

    若生 寿一

    野村證券 ESGチーム・ヘッド

    元村 正樹

    元村 正樹

    野村證券 シニア・エクイティ・ストラテジスト

    岡崎 康平

    岡崎 康平

    野村證券 シニアエコノミスト